ゴブリン博士
皆の者、聞くがヨイ! 今回の飛行訓練は、ワタクシが改良、量産化に成功した 飛行型くぐつの実用化を図るためのものデアル!
ゴブリン
ギャギャッ! ヒコウ、クンレン! クグツ、トバス!
我が天才的頭脳の所産、飛行型くぐつノ 実用化が進めバ、あの憎き人間の王子たちヲ 上空から奇襲スルことガ可能となるのデアル! これでプリンセ……いや、クイーン三姉妹様ニ ワタクシの才能を認めて頂けるハズ……。 そうなれば、きっと開発予算も倍増して……グフフ。
エレット
――いたいた、ゴブリンたちだ! こらーっ、みんなが使う道を独り占めするなーっ!
アンナ
エレットさんの報告の通り、道を占拠しているのは ゴブリン博士とその手勢のようですね。 それにあれは……いつぞやの飛行型くぐつでしょうか?
グギギギギ……これから訓練という時ニ! 人間どもメ……まさに目の上のタンコブなのデアル!
ケイティ
なにを企んでいるのかは知りませんが、 速やかに道を明け渡せば 今回は見逃してあげますよ。
……フン、断るのデアル! これほど飛行訓練に適した場所は二つとナイ! なんとシテもここで訓練を強行シテヤルのデアル! ゴブリン兵各員、戦闘配置に就くノダ! 操縦士は飛行型くぐつへ! 訓練を敢行シロ! 邪魔する者には容赦なく銃弾を浴びせるノダ!
ギャギャッ! クンレン、カンコウ! クンレン、カンコウ!
本当に訓練を強行するなんて……。 こうなってしまっては、 力ずくで退散させるしかありませんね。
飛行型くぐつはこちらへ攻め込む意図はないようです。 ですが、上空からの銃撃には十分にご注意ください。
地上の守りと回復は任せて! みんなで仲良く使うための道を ゴブリンたちの独り占めになんてさせないんだから!
(クッ……コノままデハ、 開発予算の大半を注ぎ込んダくぐつが壊れてシマウ……。 そうナレバ、クイーン様たちにナント言われるカ……) わ……悪かっタ! モウこの場所で訓練はシない! スグに撤退スルから許してクレ!
王子
…………(こくり)。
ゼングン、テッタイ! ハカセニ、ツヅケ!
ボリス
……やれやれ。逃してよかったのか、王子? さっきあのゴブリン博士だかが造ったくぐつを見たが、 ありゃあなかなか大したシロモノだぜ?
飛行型くぐつへの対処も必要となると、 今後のゴブリンたちとの戦いは より厳しいものになるかもしれませんね……。
でも、あたしは王子の決断に賛成だよ。 だって、厳しいだけじゃ人はついてこないもの。 あたしは優しい王子が好き。 みんなもそうでしょ?
なるほど……リノさんが仰っていた通り、 サラマンダーとイフリートの様子が変ですね。
リノ
火山活動が活発化すると、 召喚獣たちがその影響を受けて狂暴化するんだって。 リノ、前に本で読んだから間違いないよ! このまま放っておいたら、あの子たちはきっと リノたち召喚士の言うことを聞いてくれなくなっちゃう。 それに、ひょっとすると 地上に出て暴れ出しちゃうかも……。 お願い王子、召喚獣たちを鎮めるのを手伝って!
ソラノ
水臭いじゃない、リノ。 召喚獣のことなら、同じ召喚士の大先輩である この私をどーんと頼りなさいよ!
待ってください、ソラノさん! 貴方のように遠距離攻撃を得意とする兵を 安全に配置できるような足場が不足しています。
レアン
――あっ! 見てくれ、王子! あの中央の岩、もうすぐ冷えて固まりそうだ。 少し待てば足場にできるんじゃないか?
確かに、もう少し待てば乗れるようになりそうですね。 レアンさん、良い情報をありがとうございます。 王子、まずは拠点前の守りを固めつつ、 中央の足場が安定してきたら 遠距離攻撃を得意とする兵を適宜投入しましょう。
――って、大変! 王子、サラマンダーたちがこっちに来るよ!
戦況は刻一刻と変わっています。 王子、状況を見て適切なご判断を!
なんとか召喚獣たちを鎮められたようですね。 お疲れ様です、王子。見事な采配でした。
ありがとね、王子♪ リノたち召喚士のピンチを救ってくれて。
でも、リノもなかなかいい活躍してたわね。 前よりも腕を上げたんじゃない?
えへへ、そう思う? 実はリノもね、最近召喚獣たちの力を 前より上手に引き出せるようになったと思ってたんだ♪
まぁ、超優秀な召喚士であるところの このソラノ様に言わせれば、まだまだだけどね。
……うん、そうだよね。 天才召喚士って呼ばれるくらい強くなるには、 もっともっと努力しなくちゃダメだよね……。 でも、いつか……ううん、近いうちに、 リノは絶対にすごい召喚士になるよ! それで、今度は王子のピンチを救ってあげるから! 期待して待っててね、王子♪
???
未編集
(ここが闇の組織の構成員が集っているという 情報のあったアジトですか……)
キュテリ
(ああ。シックスのことは知ってるな? 奴の姿を見たという情報もある)
(シックス……組織幹部が直々にお出ましですか。 それに、アジトの周囲には見張りらしき人影も見えます。 いよいよ怪しいですね……)
(決して外部に漏らしたくないような 陰謀が企てられていると見て間違いないな。 組織の動向を注視していて正解だったよ)
セシリー
(シックスたちを一網打尽にする好機だ。 見つからないように注意を払いつつ、 奴らのアジトを包囲するのがいいと思う)
(だが、調査によると見張りには 特に遠目が利く者が配置されているらしい。)
モーティマ
――おいおい、いつまでこんな物陰に コソコソと隠れてなきゃなんねーんだ?
(しーっ! 静かにしてろ! 見つかったら敵が警戒を強めて 本気で私たちを消しに来るぞ!)
(わ、わかってるっつーの。 そんな怖ぇ顔しなくたっていいじゃねえか……)
闇組織構成員
……ん? なんの音だ?
(まずい、気づかれたか――)
向こうで物音がしたようだ。 お前たち、念のために哨戒にあたれ。
山賊
承知しやした!
(――ッ! 敵が来るぞ! だが、まだ完全にこちらに気づいてはいないようだ。 奴らが警戒を強める前に、隠密裏に片付けよう)
(王子、見張りに見つかってしまうと 敵が警戒を強めて手強くなることが予想されます。 見張りの視界に入らぬよう、兵の配置にはご注意を)
――むッ!? いたぞ、侵入者だ! 逃がすな!
くッ……! 見張りの銃声で他の敵にも気づかれたらしい! 気をつけろ、侵入者は容赦なく消しに来るぞ!
王子、敵が警戒を強めました! 今までより手強くなっていると思われますので、 兵に無理をさせぬようご注意ください。
兵士
――包囲完了! 逃走を試みた者は捕獲しました! ですが、シックスらしき人物は見当たりません。
言え。シックスはどこにいる? おとなしく話した方が身のためだぞ?
……ははっ、遅かったな。 あの人なら、もうとっくに場所を移動したぜ? どこに行ったか? さあな。 俺らみたいな下っ端にゃ そういった重要な情報は持たせて貰えないのさ。
……ということは、 ここで企てられていた計画についても なにも知らされていないということか?
ああ、ここに残ってる奴ら全員がな。 だからその物騒な刃物をしまってくれねえか?
……結局、無駄足だったか。 すまない、王子。あまり役に立てなかったな。
いえ、キュテリさんの情報のおかげで、 組織の構成員の多くを捕らえることができました。 幹部クラスはいなかったとはいえ、大きな収穫です。
ええ。それにシックスさんが ここでなにかを企んでいたことが 事実らしいということもわかりましたしね。 闇の組織の動向には、 今後も注意を払い続けましょう。
ああ。引き続き調査は任せてくれ。 組織の情報なら、同じように裏社会で生きてきた 私たちの方が把握しやすいからな。 ……あはは、礼なんていいって。 王子には盗みを不問にしてもらった恩もあるしな。 怪盗としての実力を役立たせられるなら本望だ。 今後も存分に頼ってくれたまえ……なんてな♪
エイミー
――さぁ、いよいよ次が最後の種目となりました! 王国軍主催の秋の大運動会! 実況はわたくし、商人のエイミーがお送りしております。
シプリア
(ふふ……この時を待っていた。 最終種目の徒競走なら、身軽な私の独壇場。 つまり、私の有能さを王子に示すチャンス……!)
それでは、最終種目の徒競走のルールを説明します。 今回の運動会は王国兵の練度の確認も兼ねているため、 参加者の皆様はゴールした後に 拠点を守る王子たちと手合わせをしてもらいます。
ケッ、面倒くせえ。 ただ走るだけでも疲れんのに、 なんだってそのあと戦わなきゃなんねーんだよ?
ふっふっふ……そう言われると思って、 徒競走の勝者には豪華副賞をご用意いたしました! なんと――王子を一日中独り占めにできる権利です!
なッ……!? 王子、どうしてそんな約束しちゃったんですか!?
…………。
公平性を期すため、走者は兵種ごとに分かれます。 同時にスタートした集団の中で、 最初に王子たちの守りを突破した人が勝者です!
ソーマ
お、王子を一日中、独り占めに……? ……この勝負、負けるわけにはいきません!
バシラ
ソーマさんは弓兵なので、私と同じ組ですね♪ ふふっ、私も負けませんよぉーっ!
テティス
(あぁ、バシラ……。 運動する姿も、なんて可愛いの……。 バシラ、バシラ……バシラぁ~~っ!!)
エレイン
私たち騎兵は最後の走者みたいね。 キャリー、あんたには絶対負けないわよ!
キャリー
私だって、エレインには負けないッ! 絶対に一番になって、王子に一日中 特訓に付き合ってもらうんだからっ!
させません! 王子、なにがなんでも拠点を守り抜きましょう! 遠距離攻撃で走行中を狙うのが上策と思われます!
さぁ、白熱してまいりました! それでは第一走者の方、 位置について、よぉーい――――ドンッ!!
それでは最終走者の方、 位置について、よぉーい――――ドンッ!!
バ~シラ~~~っ、待ってくださ~~~いっ!!
もらったぁッ!! へへーん! キャリー、先に行くわよっ!
えぇっ!? ちょ、ちょっと、なんで走ってくれないの? お願い馬さん、早く走って! でなきゃ私―― ――って、きゃあぁッ!? ど……どうしていつもこうなるのぉ~~~~ッ!?
フィリス
ハァッ、ハァッ……。 くっ……鎧を着たまま走るというのは、 やっぱり疲れるな……もう汗びっしょりだ。
ですが、良い訓練になりました。 さすがは王子。戦時における士気だけでなく、 訓練時の兵のやる気まで高めてしまわれるとは。
ディーナ
でもさぁ、あんなに必死に守らなくてもよくないか? せっかく王子に一日中 マッサージしてもらおうと思ったのに。
ナナリー
わ、私も……、 王子に一日中……なでなでしてほしかったです……。
もう……皆さん、王子はお忙しいんですからね? ともあれ、王子もお疲れ様でした。 日も落ちてきましたので、そろそろ戻りましょう。
ユユ
みんなー、手伝ってくれてありがとう! 今年のハロウィンパーティー、 絶対に成功させようねー!
エーリカ
おーっ! じゃあ私は予定通り、カボチャの中に隠れてるね。 そろそろ王子たちも来る頃だと思うし。
うんっ。脅かし役は頼んだよ、エーリカ! ……ミサちゃんも、ありがとね♪ さっき会ったばっかりなのに、色々手伝ってくれて。
ミサ
うふふ、こちらこそ♪ こんなに楽しそうなパーティーに、見ず知らずの私を 参加させてくださって、ありがとうございます。 それにお菓子まで頂いてしまって……って、あら? ねえユユさん、誰か来たみたい。 あれが王子たちでしょうか?
え、どこどこ――って、うわぁっ!? その顔は……パンプキンキング!
パンプキンキング
クヒュヒュ……面白そうなことしてるカボねぇ? そのパーティー、ボクたちも混ぜてほしいカボ!
カボチャの魔物
カボー!
……と思ったけど、今のボクたちは 魔神ビフロンス様に魂の大半を捧げた影響で、 微妙にテンションが上りきってないカボ……。 そこで! まずは君たちの魂を頂くカボ! それから、ノコノコやってきた人間どもを 魂取り放題の恐怖のパーティーにご招待するカボ!
そ……そんなの絶対にイヤ! 皆で準備したパーティーなんだよ!? それに、せっかく新しい友達もできたのに……。
クヒュヒュ! お友達とはあの世で遊ぶがいいカボ! さぁ、おとなしく魂をよこすカボ!
ユリアン
――そこまでだ。 随分影が薄くなったじゃねえか、カボチャ野郎。 ビフロンスに魂を捧げて消えたもんだと思ってたが。
チッ……王子たち! こんなに早く来るとは想定外カボ! ……まぁいい。カボチャたち、行くカボ!
話は後だ、王子。奴らを撃退しようぜ。 見たところ今の奴らは精神体だ。 剣や弓での攻撃よりは魔法の方が通りやすいかもな。
あのっ……私にも戦わせてください! 会ったばかりの私を友達と呼んでくれた、 ユユさんたちを守りたいのです! 私の中の魔が、皆さんの力になるのなら……。 いでよ、ジャックランタン! 私を……皆さんを守ってください!
ウグッ……力が抜けていくカボ。 魂が……魂が足りないカボ……。 ……何事も引き際が肝心カボ。 カボチャたち、今日のところは撤退するカボ!
カボ!
じゃあな、カボチャども。 もう二度とパーティーの邪魔なんていう 無粋な真似はすんじゃねえぞ。
ありがとう、みんな! それにミサちゃんも、助けてくれてありがとう!
ふふふ、どういたしまして。 皆さんが無事でなによりです。 ……って、そういえば、エーリカさんはどちらへ……。
――じゃじゃーんっ! 私だよっ♪
うひゃぁッ!? ……って、エーリカ! もしかして、今までずっとカボチャの中に隠れてたの?
うん、そうだよっ♪ ――って、忘れてたの!? ひっどーい!
ぷっ……ふふふっ♪ 皆さんって、本当に面白い方々ですね。 ……ですが、そろそろお暇しなければなりません。 先ほどの戦いでお見せした通り、 私はこの身に魔を飼う者……。 皆さんを脅かす前に、此処を去らなくては。 さようなら、皆さん。またいつかお会いしましょう。
なに言ってるの、ミサちゃん? 楽しいハロウィンパーティーは、 これから始まるところなんだよっ♪ ね、みんな?
……え? 皆さん、私を受け容れてくださるのですか?
もっちろんっ♪ ね、王子さま? それでは皆さん、ご一緒に――ハッピー・ハロウィン!
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