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レオナ
--救援は間に合ったようだな。
アンナ
本当に、ありがとうございました。 ……しかし、被害は甚大でした。
此度の侵攻には何か、裏があったように思う。 勿論、話してくれるのだろうな、シャディアよ。
シャディア
--助けられた分の礼はしよう。 真っ当な『人間』であれば死んでいただろう傷を、 治療してもらったのだからな……。
……では、どうして魔王を裏切ったのですか? それに、兄の、あなた自身の仇とは……?
…………。
裏切ったわけではない。 元より私の目的はひとつだけ。 魔王に復讐することだけだったのだ。 永遠に続くとも思えた私の旅は、この命の全ては、 魔王を滅ぼす為のものだった……。 王子、お前の先祖である英雄王に滅ぼされた、 千年戦争当時の魔王……。 その器として、身体を奪われたのが、私の兄だった。 幸いなことに、私の兄の身体は既に解放されている。 英雄王の剣によって、死という形でな。 だが、私はあの魔王を、私達兄妹の 運命を狂わせた奴を許すことなど出来ない。 器との血の繋がりから魔王の力の余波を受け 不死となった私は、現世に至るまでの間、 奴に真の滅びを与える機会を求め続けたのだ……。 そしてその、唯一の機会こそが今だったのだ……! ケラウノスによる呪縛を脱し、 真の力を得るまでの短い期間に陥る、 魔王の力が乱れる状態……。 だが、私は失敗した。もはや、奴を止める手はない。 ……私は、世界を終わらせる、 その引き金を引いてしまったのだ……。 ……何だ、どうした王子。 …………正気か? 私と共闘する……その意味が分かっているのか? 仲間を利用し、使い捨てた瞬間を、 魔王に背後から斬りかかった瞬間を、 お前は一番近くで見ていたはずだろう。
……諦めろ、こいつはそういう男だ。
はい、そしてその選択を間違えたことの無い方です。 私は王子を信じます。
…………呆れた連中だ。 千年戦争時代の人類より愚かだぞ、お前達は。
反発する方はいるかと思います。 しかし、偶然か必然か、そうして仲間を増やし、 戦い続けてきたのが私達ですから。 戦力の再編成を終えた後、 シャディアさんと共に出陣の準備をいたしますね、王子。 魔王が真の力を得る前に、彼の者を倒さなくては……!
白の皇帝
--成る程、あの地に満ちていた神の力の残滓、 魔王ガリウスはそれを吸収したということか。
……真の力を取り戻した魔王はもはや、 我々を脅威とは見なしていないのかもしれません。 あくまで魔王の目的は物質界の破壊。 その障害とならないなら、 殺す価値すらないと思っているかのようです。
……腹立たしい話だな。だが、むしろこれは好機だ。 こうして策を練る時間が得られたのだからな。 それに『可能性』があると言ったそうだな、シャディア。
……あぁ。だが、あくまで可能性だ。 ただの徒労に終わるかも知れないし、 そも、私が嘘をついているかもしれないぞ。
……ふん、知ったことか。 何よりこの男は、もうお前を信じる気でいるようだぞ。
…………どこまでも馬鹿な男だ。 分かった、ならば聞いてくれ。
魔王は魔界の各地に点在する、 ある種の『力』を探している。 私自身も、魔王の命を受け、 これまで、密かにその『力』の調査をしていた。 それが物質界の破壊に必要だったのか、 あるいは別の目的だったのかは分からない。 だが、それらを集めれば……。 あるいは、魔王を凌駕することが出来るかもしれない。
魔王を倒せる希望があるのなら、 それがどんなに僅かな可能性であれ、 賭ける価値はありそうですね……。
これまでも分の悪い賭けを繰り返してきたのだろう。 この男にとっては、いつものことだ。
……人間は、何千年経とうと愚かなままなのだな。 少しだけ、懐かしい気分だ。 王子よ、この共闘関係は魔王を倒す為のものだったな。 ならば、これからもお前に協力させてくれ。 人間として生きる道など、とうに諦めていたが……。 お前たちの歩む世界を、見てみたくなったぞ。
王子が諦めない限り、私達も諦めたりはしません。 必ず、魔王の軍勢からこの世界を守り抜きましょう。 これからもよろしくお願いしますね、王子。
--この世界はお前の物ではない、か。 無謀なところといい、あの言葉といい、 少しだけ兄を思い出してしまったよ、王子。