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紅牡丹
……へ、へぇ、あんた本当に王子サマだったんだな。 最初から知ってたら、 もうちょこっと礼儀とかそういうの気をつけ-- ……えっ? 気にしてない? ほほーう、あんた中々に気っ風がいいね! おっと、もう一度自己紹介しとこうか。 アタシは紅牡丹。二つ名は『千両かぶき姫』。 本物の姫じゃなくって、売り文句ってやつだけどね。 ん? あぁ、『かぶき』っていうのは、そうだなぁ、 王国でいう道化師の芝居みたいなものさ。 皆を楽しませる舞台と役者ってとこだね。 でも、かぶきの舞台も、 魔物が復活してからは、とんとご無沙汰でね……。 先代だった親父は魔物に殺され、 他の役者達も全員行方不明。 一座はもう、アタシしかいない状況なのさ。 でも、復興の途上にある今だからこそ、 街の皆を元気付けてやりたい、 それに、かぶきの伝統を終わらせたくない。 だから、どうにかしてもう一度、 かぶきの舞台をこの街でやりたいんだ……!! あんた達の戦いは、 この目でしかと見させてもらった。 あんた達なら間違いなく、舞台に立てると思うんだ。 一度だけでいい、舞台が大成功に終われば、 かぶき役者を志すやつも現れるはずだから……!! 頼む、アタシに力を貸してくれ……!! だ、だめか……? どうだ……? …………うぅっ、ありがてぇ! あんたはお天道様みたいな人だぜ……!! それじゃあ早速、稽古をしなくちゃな!! 表で待ってるぜ!
カズハ
茨木童子を演じている紅牡丹さん、 かっこよかったですよねぇ……。
イロハ
分かります……! さすがは名高い『千両かぶき姫』ですよね!
うううっ、やめろってんだい! 目の前で褒められると恥ずかしくなっちまうだろう? それより、次の稽古だ! みんな、準備はいいかい?
次はどんな場面の練習をするのですか?
妖怪に与した悪人どもの隠れ家に、 たった三人の強者が乗り込んで、 ばったばったとなぎ倒していく激しい場面さ。
アオバ
なるほど、激しい場面ですか……。 それでしたら、悪役側を演じても良いでしょうか?
コヨミ
つまり見せ場ということよね……。 それなら私も悪役側を演じようかしら♪
おや、良いのかい? 精鋭三人を相手にするなら、 妖怪側にも手練がもっと欲しいと思ってたんだ。 さぁて、殺陣とはいえ、三人だけで 多数の敵を相手にすることになるからね、 王子はとびっきり腕の立つ子を選んでくれよ?
アンナ
舞台に立てるのは三人だけ……。 王子、配役には慎重を期してくださいね。
この茨木童子サマとて、 堪忍袋の緒もォ、切れようってェ~もんだ! この日この場所で、 アッ、我が前にィ立ちふさがった事! 後悔の渦中にてェ、アッ、散るが~よいィッ!!
ふぅ、殺陣とはいえ、 王国の精鋭を相手にする中々に疲れますね……。
ふふ、でも素敵な演技だったわ。 アオバのお師匠さんも気に入ったんじゃないかしら♪
い、いえっ、これは修行で……! 良いところを見せようなどというつもりは……!!
あ、紅牡丹さんが戻ってきましたよ。
ふっふっふ……最っ高だ! 皆このまま一座に入ってほしいくらいだよ!
嬉しいお言葉ですが、 私達には成すべきことがありますので……。
ははっ、分かってるさ。 一公演だけって約束だったからねぇ。 でも、これなら本番もきっと大成功だ。 やはり私の目は間違ってなかった! さてさて、当日まで気を抜かずに稽古を続けようか!