デシウス
ええい、らちが明かん! 王子たちはまだ来ないのか!
アンナ
あれは――デシウス!? 王子、デシウスが女神の神殿を守って 魔物と戦っています!
遅いッ! なにをしていたのだ、王子!
わ、私たちは遠征から帰ってきたばかりで……。 貴方こそ、なぜ神殿を守って――
話は後だ! さっさと加勢しろ! 魔物どもから神殿を守りたければな!
わかりました。 王子、詳しい事情は不明ですが、 ここはデシウスに加勢しましょう!
……ふぅ。危ないところでした。 しかし、なぜ神殿を守ってくださっていたのですか?
フン、行きかけの駄賃というやつだ。 今回は貴様らに頼みがあって来たのでな。
ケイティ
私たちに頼み……? いままで私たちに敵対してきた貴方が、 いまさらなにを言うのですか?
まあ聞け。我輩はついに あのケラウノスを倒す方法を突き止めたのだ。
え……ケラウノス様を、倒す……?
まさか……人間を滅ぼそうとしているとはいえ、 ケラウノス様は神の一柱なのですよ? 現にあの御方は、何度追い詰めてもその都度……。
その神を殺す方法を見つけたと言っているのだ。
…………!
だが、それを実行するには……、 王子、貴様の軍に協力してもらう必要がある。 我輩一人の手には負えん案件なのでな……。 そういうわけだ。王子、協力しろ。 我輩だって貴様と共闘など不本意だが、 あのケラウノスを葬れるのだ。悪い話ではあるまい? ……なに? 詳細を聞いてからでないと決められんだと? 貴様……この我輩が頼んでいるのだぞ!
ひ、ひとまずここではなく、 もっと落ち着ける場所で話を伺いましょう。
……王子。 先ほどの会談でのデシウスの話、どう思われますか? 『聖槍グングニル』――。 はるか昔に何者かが創造し、 人類に授けたとされる神殺しの聖具……。 神は絶対の存在であり、封じることはできても 存在そのものを滅ぼすことはできないはず……ですが、 それを使えば神の存在を根本から抹消することが可能とか。 某所に封印された『聖槍グングニル』を用いれば 数多の国を滅ぼした女神ケラウノス様を完全に葬れる ――そうデシウスは熱弁していました。 その話が本当なら、確かに彼と協力して 『聖槍グングニル』の封印を解く価値はあります。 神を滅ぼす唯一の方法が その聖槍を使うことだとすれば、 ケラウノス様から物質界を守る方法は他にないですから。 ……ですが、デシウスは今まで 強大な力を得るために様々な悪逆を働いてきました。 そんな彼の話を信用してもいいものでしょうか? …………そうですね。 それしか手段がないのなら、乗るしかありません。 わかりました。では今回は彼に協力いたしましょう。 『聖槍グングニル』は砂漠の国に存在する ピラミッドの一つに眠っているそうです。 まずはそちらに向かいましょう。 ……此度の遠征、一筋縄ではいかなそうですね。 我が国と協定を結ぶ各国、各地域の方々には 私から協力を要請しておきます。
……間違いない。 あれが『聖槍グングニル』が 眠っているとされるピラミッドだ。
ご案内ありがとうございます……と 言ったほうがよろしいのでしょうね。
フン。あくまで目的のために一時的に手を組むだけだ。 礼などいらん。
バシラ
もう、素直じゃないんですから……って、あれは?
天使
……人間を発見。浄化します。 全て、主の仰せのままに……。
砂漠兵士
はぁ、はぁ……くそっ、天使どもめ! 聖地を踏みにじっただけじゃ飽き足らず、 俺たちの命まで奪おうってのか!
――あぁっ、大変ですっ! ピラミッドから出てきた天使たちが人を襲おうとしてます!
な、なぜ天使たちがピラミッドから出てくるのだ!?
とにかくあの人たちを助けましょう! 王子、ご指示をお願いします。
天使たちの撤退を確認。 ……デシウスさん、大丈夫ですか?
……あれだけ大勢の天使たちが ピラミッドから出てきたということは……。 まさか……中にはすでに奴らが……。
???
――はぁっ、はぁっ……よかった、無事でしたか。
おぉ、ネフティ様! よくぞご無事で! 我々はこの方々に救っていただいたのです。
当然のことをしたまでです。 ……あら? 貴女は確か……。
ネフティ
――ッ! 貴方がたは、以前バステト様の復活を邪魔した―― ……いえ、いまはそれどころではありません。 聖地であるピラミッドが破壊されてしまう前に、 侵攻してきた天使たちを撃退しなければ……。
ピラミッドを破壊するだと!? くっ……天使どもめ、聖槍ごと砂漠に埋めるつもりか! 王子、まずいことになったぞ。 どうやら我々は天使に先回りされてしまったようだ。 おそらくケラウノスに勘付かれたのだろう。
……天使たちにピラミッドを破壊される前に 聖槍グングニルの眠る場所までたどり着けなければ、 ケラウノス様を永久に倒せなくなる、ということですか。
モーティマ
はン、それがどうしたってんだ? ピラミッドの中にいる天使どもを 片っ端からブッ倒して進めばいいだけの話だろ?
――お待ちください! 聖槍グングニルの在り処を知っているのですか? 闇雲に進めば、ミイラ取りがミイラになりますよ?
ですが、早くしないと天使たちに――
私はネフティ。貴方たちが探している聖槍の守護者です。 私が道案内をする代わりに、貴方たちは天使を倒す。 ――そういう契約でいかがでしょうか?
……わかりました。 王子、ここは彼女に案内を頼みましょう。 ネフティさん、よろしくお願いいたします。
聖槍グングニルの眠る場所はこの先です。 暗いので足下にお気をつけください。
(くっ、この女に案内されては我輩の立場が……) (だが、率直に言えば案内者がいて助かるのも事実。 内部の道までは情報提供者も知らなかったからな)
――むっ、あれは……!
愚かな人間たちよ……。 神のご意志に逆らう者は、粛清します。
ソーマ
わわっ……天使さんたちが 奥の方から大勢出てきました。 一体何人いるんでしょう?
……天使だけではありません。 開いた状態の棺には魔物も潜んでいます。 空中ばかりに気を取られては、足元をすくわれますよ。
……我らの役目はこれまでです。 あとのことは先へ行った者たちに任せましょう。
ユリアン
……ずいぶん足止めを喰らっちまったな。 だが、これで天使どもがピラミッドを破壊すんのを かなり遅らせられたんじゃねえか?
そう願います……が、 天使たちの言っていたことが気になりますね……。 先へ行った者たち、とはどういうことでしょうか? 天使たちの目的はピラミッドの破壊ではないのですか?
違うな。天使たちの目的は聖槍を使えなくすることだ。 おそらく主であるケラウノスに そう命じられているのだろう。 だが、聖槍グングニルはそう容易く持ち運んだり 壊したりできるようなシロモノではないらしい。 それに奴らも聖槍の詳しい在り処までは知らんはずだ。
……だからピラミッド全体を破壊することによって、 聖槍もろとも砂の中に埋めようとした、ということですか。
だろうな。だが、もしも天使どもが 我輩たちよりも先に聖槍の在り処に辿り着いたとすれば、 その部屋を破壊する事で、奴らは目的を達することになる。
――こうしてはいられません! 聖槍を守らなくては!
ね、ネフティさん……あの、足下に……。
え、足下? ――って……きゃああぁッ!? ね、ネズミ嫌ぁあ~~~~っ!!
フハハハハ! そんな猫のような恰好をしているくせに ネズミごときを怖がるとはな!
……デシウスさん。 案内役の座を奪われたからといって ネフティさんに対抗意識を燃やさないでください。
ば……馬鹿を言うな! 下らんことを言っていると天使どもに先を越されるぞ! ……おい女、腰を抜かしてないでさっさと案内をしろ!
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