千年戦争アイギス Wiki

ボリス

よし、後はこことここを結べば……
ほらよっ、直ったぞ！

兵士

わあ〜。ありがとうございますボリスさん！
まさか、鎧まで直せるなんて……！
くぐつの技師さんってすごいんですね！

ボリス

ははっ、手先の器用さだけが自慢だからなあ。
まぁ、ただの応急処置だ。
後でちゃんと武具職人に見てもらえよ。

兵士

はいっ……！

ゴブリン

ギャギャー！

兵士

ま、魔物……！
王子達を呼んできます！

？？？

――わわわっ！　ちょ、ちょっと！
止まって！　止まって〜〜〜っ！！

ボリス

ん！？　もしかしてあれは、ティアルか？
それに、なんだあのくぐつ、
空を飛んでるじゃねぇか……！？

ティアル

あっ−−！　もしかして、ボリス先生！？
ちょ、丁度良かった……！　この子を止めて下さい！
言う事聞いてくれなくって！

ボリス

まーた整備ミスったのか……。
手先の不器用さは相変わらずだな。
やれやれ。

ティアル

良かった……！
やっと止まってくれた！

ボリス

一体全体、なにやったら
あんなことになるんだよ。

ティアル

えぇっと……ちょっと駆動部分の
ゼンマイの大きさと数を倍に……。

ボリス

……くぐつ本体の重量を考慮してないじゃねぇか。
何でもとってつけりゃいいってもんじゃねぇって、
前にも教えたと思うんだが？

ティアル

で、でも、ちゃんと空を飛べたんですよ！！
もうちょっと調整すれば、
安定して飛べるはずなんです！

アンナ

あの……お二人はお知り合いなんですか？

ボリス

昔の教え子だ。
一番不器用で、出来の悪い奴だったけどな。

ティアル

え、えへへ……。先生には、
私が壊したくぐつ何度直してもらったっけ……。

ボリス

数え切れねぇな。
ま、元気そうで何よりだ。

アンナ

ふふっ。
何だか積もる話が沢山ありそうですね。

ここではまた魔物が出るかもしれません。
一度戻りましょうか。
私達の拠点でゆっくり話されてください。

ティアル

さっきはこの子を止めてくれてありがとう。
改めて、私はティアル。ボリス先生の一番弟子！
……だと思ってるんだ。

せ、先生はどう思ってるかわからないけどね！

さっきも、まだ技師として独り立ちできる腕じゃねぇって
怒鳴られちゃった……てへへ。

でもね、王子達もさっき見た通り、
もう少しで空を飛ぶくぐつが
開発できそうなんだ！

飛空船は、飛行石っていうすごく希少な鉱物を
動力に空を飛んでいるんだけど、
私はくぐつの力だけで空を飛びたいの。

まだ試作段階で、最後の調整が
うまくいってなくて困ってたんだけど、
今日ボリス先生に偶然会えたのは本当に奇跡だよ！

魔物が復活してからは、
もう会えないんじゃないかと思ってたし……。

先生にこの子のダメな所も見てもらえたし、
後は、完成に向けて作業するだけ。
完成まで、もう少しってところかな。

……っと、嬉しくて私が喋ってばかりだったね。
そんな訳で、完成したら王子たちにも
見せてあげるから。楽しみにしてて！

それじゃ、世紀の大発明に期待しててね！！

ボリス

じゃあな、ティアル。
もう俺に面倒かけんじゃねぇぞ。
次に会う時は、そのくぐつ完成させてこいよ。

アンナ

ティアルさん、くぐつの開発頑張ってください。
私達も、完成する日を楽しみにしてますので！

ティアル

うん、任せといて！　ぜ〜〜〜ったいに、
完成させてみせるんだから！
それじゃ皆、またね〜〜〜っ！！

ケイティ

元気な方でしたね。
では、我々も戻りましょうか。

ゴブリン博士

――目標が王子達から離れたようだナ。
お前達、あのくぐつ使いヲひっ捕らえヨ！

ゴブリン

ギャギャッ！
ツカマエル！　ツカマエル！

ティアル

えっ？　な、何！？　何なの！？
き、キャーーーーーーッ！！

ケイティ

――今の声は！？

ソーマ

た、大変です！
ティアルさんがゴブリンに
襲われています！！

ゴブリン博士

ムッ、気づかれたカ……だが、
ここで邪魔される訳にはいかン！
お前たチ、奴らを足止めシロ！

ゴブリン

ギャギャッ！
トメル！　トメル！！

ケイティ

くっ、ゴブリン達が道を塞いでいます……！

アンナ

王子、急ぎ部隊展開のご指示を！

ソーマ

周囲のゴブリンは全て撃退できたようです。
ですが……ティアルさんの姿が見当たりません。

ケイティ

どうやら、敵の目的は
ティアルさんを連れ去る事だったようですね。

ボリス

全く、あいつって奴は……。
浮かれてるからこんな事になるんだ。

アンナ

このまま彼女を放っておく訳にもいきません。
なんとかして彼女を探しださなければ……。

ケイティ

とはいえ、ゴブリンの巣は沢山あります。
闇雲に探していては、
とても見つけられそうにありません。

ボリス

こうなりゃ、飛空船で上空から探すしかねぇな。
白の皇帝の許可がいるが……。

ま、飛空船の技師は俺くらいしかいねぇ。
頼めばなんとか貸してくれるだろう。

アンナ

分かりました。
私達も引き続き捜索を続けます。
何か情報が分かり次第ご連絡します。

ケイティ

それにしても、ゴブリン博士は
何故ティアルさんを狙ったのでしょう。
いつもなら、ゴブリンは私達を狙ってくるのですが……。

ボリス

ゴブリンは知能は低いが、
簡単な道具を作る技術は持ち合わせているからな。
大方、くぐつに興味をもったんだろう。

ケイティ

なるほど……。
くぐつの技術がゴブリンに渡ってしまうと、
ゴブリン達がさらに強力な兵器を作るかもしれません。

アンナ

一刻も早く、彼女を助け出さないと……。
それに、ゴブリンは凶暴です、
技術だけで済むかどうか……。

王子、ティアルさんを早く探し出しましょう！

ゴブリン博士

クイーンサマ、どうですカ？
新しい兵器「飛行型くぐつ」ハ！

ゴブリンクイーン

ウフフ、よくやったじゃない博士。
ここ最近は、失態続きだったから
そろそろ処刑かと思ってたところよぉ。

ただ、スピードが足りない気がするわぁ。
矢も追いつけない程の速度じゃないと、
すぐ狙撃されちゃうに決まってるじゃない？

ゴブリン博士

す、スピードですカ……。
操縦者の技術ガ上がれば何とカ……。
少し、訓練を積む為のお時間を頂きたク……。

ゴブリンクイーン

何を言ってるのかしら？
私は待つのが嫌いなの知ってるわよねぇ？
分かったら、今すぐスピードを上げるのよ！

ゴブリン博士

し、シカシ……。
何ブン、兵達もこのような飛行物を
操縦するのは初めてデスシ……。

ゴブリンクイーン

兵達の士気が足りないんじゃないかしらぁ？
そうだ！　いいことを思いついたわぁ。

今からレースを始めなさい！
レースをやってビリになった奴は、処刑だわ！

ゴブリン

ギャギャーー！
マケタクナイ！　マケタクナイ！！
シニタクナイ！　シニタクナイ！！

ゴブリンクイーン

ほら御覧なさい、博士。
兵達がやる気を出してるわ。
やっぱり、恐怖って大事よねぇ。

ボリス

――王子ここだ、ゴブリン達が集まっているのは！
ゴブリンクイーンもいるようだぞ！

アンナ

ゴブリンクイーン！
ティアルさんを返してください！

ゴブリンクイーン

誰かと思えば、王子達じゃない。
ティアル？　……あぁ、このくぐつを作った
技術者の事ね。

そうだ！　丁度良かったわぁ。
今からくぐつのレースを始めるのよ。
そのティアルって子も参加させましょう。

最終レースまで、
ビリにならなかったら解放してあげてもいいわよぉ。
技術は全部奪ったし、どうせ用済みだったしねぇ。

ティアル

レースに参加……！？
ビリになったら処刑……って、
死んじゃうって事だよね……。

ボリス

おい、ティアル！
そんなレース参加する必要ないぞ。
俺達が、すぐに助けてやる！

ティアル

ま、待って……！
私、レースに出る……！

ライダーの誇りにかけて、レースで正々堂々と戦う！
せっかく完成させたこの子と一緒に、
レースで勝ち残ってみせる！

ボリス先生、見ててください……！

アンナ

ティアルさん……。
本気のようですけど……、
王子、どうしましょうか……？

……分かりました。
ティアルさんの意思を尊重し、
レースを見守りましょう。

ケイティ

王子、ゴブリン達のことです。
どんな妨害があるかわかりません。
不測の事態に対処できるよう、準備はしておきましょう。

アンナ

――……やった！　やりました王子！
ティアルさんが勝ち残りました！

ボリス

けどギリッギリじゃねーか。
……ったく、
ハラハラさせんじゃねーぞ。

ティアル

す、すみません……で、でも、
ちゃんと勝ち残りましたよ！

ケイティ

流石の乗りこなし……見事なものでしたね。

ゴブリンクイーン

ふぅん……まぁ、一回戦で終わっちゃうのも
面白くないものね。少しは楽しめたわ。
次のレースも精々楽しませて頂戴。

ではお楽しみの処刑の時間よぉ。
ビリになったのは貴方ね？

ゴブリン

ぎ、ギャギャアアアアアアアアッ！！

アンナ

……ッ！　配下の者を
ああもあっさりと……。

ゴブリンクイーン

言ったでしょ、ビリのノロマは処刑だって。
勝負のルールは絶対よ……だから安心なさい。
最後まで勝ち残ればちゃんとその子は解放してあげる。

まぁ、それができればだけどね。
ウフフフ。

ティアル

ゴブリンクイーン……恐ろしい奴だね……。
でも、私は絶対に負けない！

この子の走りの癖も何もかも、
長年の付き合いで、私には分かるの。
そう簡単にくぐつを乗りこなせるわけないんだから！

ボリス

いっちょ前の事言いやがって……ったく。
あんなにギリギリのレースだった癖に……。

アンナ

王子、さっきのレースでも、
ゴブリンの乱入がありましたし、
また罠が仕掛けられてるかもしれません。

私達も、出来る限りサポートしましょう！

ゴブリンクイーン

あぁ〜〜。
ハラハラドキドキしてきたわぁ〜〜。
命をかけたレースって本当に楽しいわねぇ。

さぁ次のレースも早速始めるわよぉ。
次にビリになるのは誰かしらねぇ〜〜！

ゴブリン博士

（――こ、このままでハ、せっかく育てた
操縦士が処刑されテしまう……
……そうダ、あの人間をビリにすれバ！）

（しかし生半可な妨害では、
王子達に邪魔されてしまウ……仕方なイ、
ボアを使って妨害してやるのダ……！）

アンナ

――ティアルさん、頑張ってください！

ボリス

絶対負けんじゃねーぞ！

バシラ

ティアルさんなら絶対勝てます！
また、ビューンと抜き去っちゃってください！

ティアル

えへへ、任せておいて。
かっこいい所、皆に見せてあげるんだから。
それじゃ皆……応援よろしくねっ！！

ゴブリン

――ギャギャアアアアアアァァっ！

ゴブリンクイーン

ウフフ。処刑も済んだところで、
そろそろ会場を変えたい所だわねぇ。

もっとスピードが出せそうな所……、
そうねぇ……「海」なんてどうかしらぁ！？

ゴブリン博士

う、海……ですカ……。
確かにスピードは出せるかもしれませんガ、
海の潮で機体がボロボロにな――

ゴブリンクイーン

やっぱりそう思うわよねぇ？　博士！
じゃあ早速会場の準備をするのよぉ！

ゴブリン博士

は、はい……。
（あぁぁ……ワタクシのクグツが……）

アンナ

どうやら、会場を変えるようですね。
次の会場は……海、ですか。

ボリス

今のままじゃ、潮でくぐつがダメになっちまうかもな。
……昔、教えた錆止め用の塗装技術、
ちゃんと覚えてるか？

ティアル

も、もちろんです先生！
えーっと、め、メッキとそー？　ですよね。
まずはしっかりと表面を磨きあげて――

ベルナール

どうやら、私の出番のようですね。
どれ、研磨材を貸してみなさい。
……ウオオオォォォッ！！

バシラ

す、凄いです！　表面がどんどん
ツルツルに磨き上がっていきます！！

ボリス

やるじゃねぇか。これなら、
次のレースまでには充分間に合いそうだな。

アンナ

良かった、海でのレースも問題はなさそうですね。

次のレースでも、いつ妨害が入るかわかりません。
王子、引き続きティアルさんをサポート致しましょう！

グレーターデーモン

うぅむ、困ったものだねぇ。
折角新たな暗黒騎士達を作り出したというのに、
彼らを率いてくれる者が中々いないねぇ。

どこかに、程よく絶望に染まった
心地良い魂の持ち主はいないものかね……おや？

？？？

――水霊達よ、我が呼び声に応え、
豊穣たる祈りの雨となりて……あ、蝶ちょ……
……あ、あぁ！？

あぁ……お水さん帰っていっちゃったぁ。
うーん、もっと精神力を保たないと……
……よぉっしもう一回！　頑張りますよー！

グレーターデーモン

……ふむ、そこのお嬢さん。何やら
力を求めているようだね？　どうだい、
ワシと共に来れば君の望む力を……

？？？

……ひゃ、ひゃあっ！？　ま、魔物！？

グレーターデーモン

如何にも。人間の言葉だとワシは「魔物」だね。
同時に、力を与える事ができる神だと呼ぶ者もいる。

ワシが力を与えれば、
君の大好きなお水さんも、操り放題。
ウン、楽しい未来が待っているよ。

？？？

い、嫌です……そんな力、要りません！
水霊はお話をして、心をつなげて初めて力を
貸してくれるんです！　操るなんて、絶対しません！

グレーターデーモン

ふぅむ。
素材は悪くないと思ったけど、
君には絶望が足りないみたいだね。

よし、暗黒騎士達よ。
あのお嬢さんをなぶって差し上げなさい。
「絶望」を感じるくらいにね。

？？？

…………な、なぶる……？
そ、そんな……。

グレーターデーモン

さて、ワシは引き続き良い素材でも探すべく、
辺りを散歩でもしておこうかね。

？？？

だ、だれか……誰か助けて……――

ケイティ

―――王子、こちらです！
デーモンの姿を見かけたと報告があったのは！

アンナ

……！？　王子、どうやら
女の子が襲われているようです！
急いで助けましょう！

？？？

……え？　王子……さま……？
ふ……ふぇ……良かったぁ……。
もう、駄目かと思いました……。

アンナ

もう心配ありません。
ここは我々にお任せください。

？？？

あ、あの……わ、私も……私も戦わせてください！
こう見えて、お水さんの力をかりる事が出来るんです！
少しは……お役に立てるはずです！

硬い鎧も、私のお水さんなら
貫く事ができるはずですので……王子さま、
お水さんの力を使う時は、私にご指示をください！

？？？

よかった、なんとか退ける事ができました。
ありがとうございました！

セノーテ

っと、す、すみません、
自己紹介が遅れてしまいました。
私、セノーテって言います！

アンナ

セノーテさん、よろしくお願いします。
それにしてもすごい力ですね！
まるで、水が意思を持っている様でした。

セノーテ

ありがとうございます。まだまだ
未熟ではあるのですが、お水さんと交信して
ちょっとだけ力をかりる事が出来るんです。

ケイティ

セノーテさんは、一体ここで何を？

セノーテ

あの……実は、平和の為に戦う王子さま達を、
ずっと探していたんです……皆さんが、そうですよね？
助けに来てくれた時、絶対そうだと思いました！

ケイティ

はい、確かに我々は王国の者ですが。
何か、ご用事でも？

セノーテ

わたし、王子さま達の事をお水さん達からきいて、
いつかは王子さまのお役に立てればと、
ずっと思ってたんです……。

今はまだ特訓中の身ではありますが、もっともっと
頑張りますので……どうかその時が来たら、
わたしも共に、戦わせて頂けないでしょうか……！

アンナ

そのお気持ち、大変嬉しく思います。
はい、その際にはぜひセノーテさんの御力を
貸していただければと。

セノーテ

……は、はい！　ありがとうございます！
私、もっともっと精進してまいりますので！
……ぜひ、よろしくお願いします！

ボリス

――……う〜ん。こりゃ随分と長い間
漂流していたんだろうな。

あちこち穴だらけ、甲板は腐りかけと来たもんだ。
むしろ、よくこの状態で沈んでないもんだぜ。

アンナ

そうですか……やはり、修理は難しそうですね。

マリエ

修理すれば使えるようになるかとも思ったですが、
残念です……。

ボリス

こんなご時世だ、あるものを利用しようってのも
判らなくはねーけどよ。これを修理して使うくらいなら、
新しい船でも作った方がよっぽどマシだろうな。

ベアトリカ

にしてもこの船、一体何でこんな所で
漂流してたんだろうな……ん？

亡霊

…………。

マリエ

きゃあーーーーーーーー！
ぼ、ぼ、ぼ、ぼ、亡霊です！！

クリストファー

王子、亡霊達には物理での攻撃は通用しにくい。
撃退するなら、魔法が有効だよ。
慎重な指示を頼む。

亡霊

帰って…………早く………。

亡霊

…………。

ケイティ

いなくなりましたね。

マリエ

さっきの亡霊、水兵だったです。
何か言いたそうでしたが……。

ベアトリカ

海賊も一緒だったのも気になるが……
……まぁ、深く考えても仕方ねぇか。
大方魔物にでも襲われたんだろうさ。

クリストファー

亡霊は強い未練によって生まれるもの。
それだけ強い未練を生み出す何かが、
この海では起こったのかもしれない。

アンナ

強い未練を生み出す程の何か……
……王子、この海域には、
少し注意をしておいた方が良さそうですね。

ベアトリカ

海の事なら俺に任せておきな。
こっちの方で調べておいてやるよ。

マリエ

私の方でも調べてみるです。
何か判ったら、お伝えしますです！

アンナ

ありがとうございます、お二人とも。
何か判りましたら、是非教えて頂ければと思います。
それでは戻りましょうか。

ゴブリンクイーン

抜けるような青空……。
輝く水面……。
ステキなレース場だわぁ博士！

ゴブリン博士

は、ハイ……。
お気に召したようで、何よりでス……。

ただ、頂いていた軍の予算を、
大分使ってしまったものデ。
追加の予算をご検討頂きたク――

ゴブリンプリンセス長女

――お母さまってば、こんな楽しそうなレースに
私達姉妹を呼んでくれないなんて。
まったく酷いじゃない！

ゴブリンクイーン

あら？　可愛い娘達じゃない。
ウフフ、ごめんなさいね。
つい思い付きで始めちゃって。

ゴブリンプリンセス三女

ふふ、お母さまらしいですね。
急いで駆け付けてきたもので、
縦巻きロールヘアも甘くなってしまいましたわ。

ゴブリンプリンセス次女

三女のロールヘアなんてどうでも良いのよ！
それよりお母さま、私達、考えたんですの。このレース
ゴールドを賭けたらもっと楽しくなるんじゃないかしら！

ゴブリンクイーン

それは名案ね！　さすが私の娘達！
一位を当てた者が賭け金を総どり。

――……長女は青、次女は赤、三女は緑ね。
私はそうねぇ……あの人間かしらぁ！
なかなか根性ありそうだし、見どころあるわぁ！

ゴブリンプリンセス長女

お母さまが人間を選ばれるなんて……でも、お母さまに
そう言わせるだけの人間。少し楽しみだわ。
……そうだ、折角だし博士も誰かに賭けなさい。

ゴブリン博士

へ……？　しかシ、私頂いた予算以外に
ゴールドを持ち合わせてハ……。

ゴブリンプリンセス次女

博士は三女と同じ緑で良いじゃない。あまりパッとしない
博士らしい色よ……あ、そうだお母さま。応援のため、
私達がレースに乱入しちゃってもいいのよね？

ゴブリンクイーン

ウフフフ！　勿論よぉ！
それじゃ、早速レース開始だわぁ！

ゴブリン博士

…………。
（ぐぬヌ、勝手な事ばかり……魚人にゴールドを渡しテ、
協力を仰がねば……なんとしても人間をビリに……！）

ティアル

ふぅ…………やったー！　三連勝ーッ！

アンナ

凄いですティアルさん！　レースをする度、
速くなっているような気がします！

ティアル

えへへ、やっぱり？　私もそう思ってたんだー♪
私って、結構才能あったりしちゃうかなぁ……
……あいたっ！？

……な、何するんですか先生！
いきなりゲンコツだなんて！

ボリス

調子に乗りすぎだ。まだレースが
終わったわけじゃねーんだ、
気を引き締めていけ。

ティアル

……はぁい。

ケイティ

中々に手厳しいですね。

ティアル

……そうなんですよ！　先生って昔から
私にばっかり厳しくて……少しくらい、
優しくしてくれてもいいと思いません！？

ボリス

誉めるとすーぐ調子に乗るからだろうがっ！
ったく、才能だけなら昔から……いや、なんでもねぇ。
兎に角だ、浮かれすぎて油断なんてすんじゃねーぞ！

ティアル

わ、わかりました！
よーし、次のレースも頑張るぞー！！

ゴブリン博士

…………ギギギギッギィ。
優秀な操縦士も、ゴールドも、私の手元から
消えて行ク……なぜこんな事ニ……。

最終レース場の設備費用も何もかも
軍備から捻出し、クイーン様のお戯レにも
付き合っテいると言うのニ……！

ゴブリンクイーン

博士、何やっているの？
さぁ最終レースの会場へ案内なさい！

ゴブリン博士

……ハイ。

ゴブリンクイーン

んまぁ〜〜〜〜。
なんてレインボーなレース会場なの！
オーダー通りよ！　やるじゃない博士！

ゴブリンプリンセス長女

今度は、何色のくぐつに賭けようかしら。
黒も速そうだし……でも赤も……
う〜ん悩ましいわぁ。

ゴブリンクイーン

人間の子、なかなかやるみたいだし、
次もあの子に賭けちゃおうかしらぁ。
何だかファンになってきたわぁ！

ゴブリン博士

ク……クイーン様！！！
お戯れも程ほどにしてクダサイ！！！

飛行型くぐつの技術ハ、全て私が手に入れましタ。
これ以上人間を生かす意味などありませン！

ここでアイツを殺しておけば、
この技術はゴブリン軍だけのもの……即チ、
ゴブリン軍は圧倒的強者となるノデス！

ゴブリンクイーン

そうねぇ……でも、
最終レースまで勝ち残ったら解放するって
約束しちゃったしねぇ……。

ゴブリン博士

人間共との約束なド、守る必要ありませン！

ゴブリンクイーン

何を言ってるの？　博士。
他人を操っても嘘はつかない。それが私のポリシー。
私は約束を破った事はないし、これからもないわ。

博士、ターボ搭載のくぐつを用意なさい！
次のレース……私が出るわ！

ゴブリン博士

へ？　タ、ターボ……ですカ……？
し、しかシくぐつの重量を無視した装置ハ……。

ゴブリンクイーン

次のレースは、１位以外は全員処刑よ！
私自らが、あの人間を処刑台に送ってやるわぁ！
ウフフフフフ。

くぐつに搭乗したゴブリンクイーンは
長射程の遠距離攻撃を行います。

また、ゴブリンクイーンは
拠点に向かわず、
倒さなくても★の評価には影響
しません。

ゴブリンクイーン

あら？　何かしらこの煙……？

ゴブリン博士

あ、あぁ……やはり設計に無理が……。
く、クイーン様！　くぐつの耐久がもちません、
今すぐレースを棄権されて下さイ！

ゴブリンクイーン

この私に棄権ですって？　ありえないわ！
こんなもの、叩けば直るに決まってるわよ！

ゴブリンクイーン

――このポンコツ！　さっさと進みなさい！！
……ふぅ……やっと動き出したわね。
……あら？　ちょっと、高度が落ちてきてるわよ。

ちょっと、止まりなさいこのポンコツ。
そっちはコースじゃ……ちょ、ちょっと
止まりなさい。こ、このままじゃ……ッ！？

あぁぁ〜〜〜れぇぇぇ〜〜〜〜〜ッ！！！！

ゴブリン博士

――く、クイーン様が……。
奈落に……落ちてしまわれた……。

ゴブリンプリンセス長女

そ、そんな……。

ゴブリンプリンセス次女

お母さま！　嘘ですわ！！
こんな、こんなことって……！

ゴブリンプリンセス三女

お母さま……う、うぅっ…………。

ゴブリンプリンセス長女

……貴女達、しっかりしなさい。
お母さまがいなくなった今、私達三姉妹で
ゴブリン達を率いて行かなきゃいけないのよ。

……人間、命拾いしたわね。
今は大人しくこの場を去ってあげる。
ただ忘れないことね。ゴブリンは不滅よ。

アンナ

……行ってしまわれました。
何はともあれ、お疲れ様です、ティアルさん。
無事レースを切り抜ける事ができて良かったです……。

ティアル

うん！　それもこれも、
皆と先生のおかげだね。
ありがとう！

ケイティ

我々は特に何もしていませんよ。
レースの妨害を狙う、
不届きな輩を成敗したにすぎません。

ボリス

そうだぜ。レースを勝ち抜いたのは正真正銘お前と、
お前の作ったそのくぐつの力だ……少し見ない間に、
いいもん作るようになったじゃねぇか。

ティアル

せ、先生……！

ボリス

……が、まだまだだな。俺だったら、
もっと速く作る事だってできらぁ。

ティアル

え、えぇ！？　この子をもっと速く！？

ボリス

おう、出来らぁ。貸してみな、
ここをこうしてだな……。

ティアル

ふわぁ……凄い……こんな発想、
私にはとても……流石ボリス先生です！

ボリス

はん、まだまだ弟子には負けてらんねぇっての。
……よっし、お前のお陰でこっちも燃えて来たぜ。
コイツを仕上げたら、次はもっとすげぇのでも作るか！

ティアル

わ、私もお手伝いさせて頂きます！！
今後ともご指導のほど、
よろしくお願い致します！！

アンナ

……こ、こんな感じで良いのでしょうか？

ティアル

後は、くぐつを信じる気持ちです！
……あ、王子！
今、アンナさんにくぐつの乗り方を教えてたんだ。

誰かにくぐつの事を教えるなんて初めてだけど……。
くぐつへの想いはボリス先生にだって負けないから
大丈夫だよね！

ケイティ

……お話中の所失礼します。
王子、訓練の準備が整ったようです。
今日は海での訓練、実りあるものにしたいですね。

モーティマ

山賊が海で訓練だぁ？
バカらしい……って、怪しげな洞窟があるじゃねぇか。
もしかしてお宝でも――

ケイティ

モーティマさん、訓練として来ている事をお忘れなく。

モーティマ

お宝がありゃ、王子だって助かるだろ？
おい、野郎ども行くぞ！

ミレイユ

王子、砂浜での采配見させて頂きます。
騎兵隊も、準備が完了次第参加しますので、
油断なきように。

ダン

へへっ、足場が悪い砂浜だからこそ、
走り込みには最適ってもんだぜ！

サキ

忍者には砂浜も水の上も関係ないわ。
スイトンの術、見せてあげる！

ミネルバ

海で海賊に勝てると思っているのかしら？
訓練と言っても、今日は本気で行かせてもらうわよ。

フィリス

私とポーラは、今日は休みなんだがな……。
訓練に巻き込まれないよう、気を付けないと。

アンナ

なんだか皆さん、自由な感じですね……。
私も今日はくぐつに初挑戦しますので、
王子も訓練、頑張ってくださいね！

アンナ

く、くぐつに乗るのがあんなに大変だとは……。
ティアルさん達はスゴイですね。

ティアル

アンナさんも、初めてにしてはすっごい上手だったよ。
もっと特訓すれば、すぐ乗りこなせるようになるよ！

あ、もっとスピード出た方が練習になるかな？
そうだ、ゼンマイの大きさと数を増やして……。

アンナ

い、いえ、私はもうくぐつは……。

ボリス

おいこら、ティアル。乗ってるのが初心者だってこと
忘れてんじゃねーぞ。見ろ、もうヘトヘトじゃねーか！

ティアル

せ、先生！？　……す、すみません。
そこまで気が回っていませんでした……。

ボリス

ったく、無茶な事させて怪我したらどうすんだ。
技術は上達してきても、まだまだ人に教えるには程遠いな。
……お前はまだ人に教えるのは禁止だ！

ティアル

え、えぇ〜！？

ボリス

それにそのねじの巻き方もあますぎんだよ。
ほら、早くこっちこい！
本当のねじ巻きってやつを教えてやる！！

ティアル

は、はぁ〜い……。

アンナ

それでは今日の訓練は終了ですね。
王子、それに皆さんも、お疲れ様でした。